「えっと、私この近くの高校に通ってるんですけど」
「うん、けっこう有名な進学校だよね?俺も名前は聞いたことあるな」
「私、あんまり頭良くなくて、そこに入るのもギリギリだったんです。ギリギリ合格できて、その時はすごく嬉しくて、私舞い上がってしまって」
「うんうん。そりゃ嬉しいよね」
「入学式で、よく成績のいい子新入生代表として喋るじゃないですか。その代表の子が当日休んだみたいで、代わりに喋ってもらえないかって頼まれたんです。原稿は先生たちの方で用意するって言われたので、それなら良いかなと思って」
「じゃあ、みんなの前で喋ったんだ?すごいじゃん」
「は、はい。まぁ…で、生徒会長の霜月さんと壇上で握手して、その時は何もなかったんですけど」
ガコンと部屋の奥で物音がした。
え…何の音?何か声も聞こえたような…
「あ、ウチ猫飼ってるんだよ!ツッキー暴れんなよ!飯抜きだぞ!」
彼が大声で呼びかけると、もとの静寂に戻った。どうやら主人には逆らえないらしい。それに彼は何故だか少し笑ったように見えたけれど。気のせいかな…