私とアオハル


俺は賢くないし、頭もキレる方じゃない。
どっちかっつうと体を張るタイプというか、そういうことしかできない。

それなら…やっぱり。
俺はもう一度、美織の家の周辺をうろついた。何か、見逃しているかもしれない。俺にはわからなくても、兄貴なら何か見抜けるかもしれないから。
美織がさっきまでどこにいたのか、他にもいろいろ。まだやれることはあるはずだ。
2つ目の角を曲がったとき、黒いワゴン車がこっちに直進してきた。

本当に数秒の出来事だった。
ただ、なんとなくその車を目で追っていた。無意識のうちの行動だったけど、ソレから目が離せなかった。


『たすけて』と。


そう聞こえた気がしたから。

助けを求めているあいつの姿が脳内で再生される。確証がないどころか、俺の想像でしかないけど。

この辺りはあまり人通りがない。
それは人に限らず、車にも言えることで。
それこそ、この周辺の住人の車がたまに行き来するくらいなこの道路に…


黒いワゴン車。


わからない。でも、違和感は消えない。
パシャリ。

黒いワゴン車の後ろ姿をスマホに収めたところで、バタバタと駆けてくる2人分の足音があった。

──other side・終──