──other side──
何だよ…!?『たすけて』って!
俺は幼なじみの家の周りをかけずり回っていた。
意味わかんねぇよ。帰ってくるんじゃなかったのかよ…
美織に何があった?俺はどうするべきだ?警察?いや、でも…わからない俺は、ただ走るしかない。
何かに巻き込まれたのか?だとしたら、悲鳴のひとつぐらい聞こえるはずだ。あいつ怖がりだし、逃げ足はえーから大丈夫な気もすっけど。さっきからいくらメッセージを送ってもいっこうに既読はつかない。
くそっ…俺が今日、部活を優先しなければ…!
『たすけて』だなんて送っておいて実は何もありませんでしたーとか、そういうのは絶対ねぇだろーしな。どこ行ったんだよ…美織…!
リリリっと、スマホが鳴った。電話だ。
もしかして、美織?
「もしもし!」
「あぁ結人。部活中悪いな、今抜けられるか?」
「え?兄貴!?なんだよ、急に。あ、ごめん。今、俺それどころじゃないんだ!」
「何かあったのか?」
「前にちょっと話しただろ?気弱な幼なじみがいるって。そいつが意味わかんねぇメッセージ残して音信不通なんだ!悪いけど、またあとでかけ直すから」
兄貴の表情が強ばった気がした。
テレビ電話してるわけじゃねぇし、分かるはずないんだけど。それでも、俺にはわかった。
それくらい、兄貴は焦っていた。
「結人!おまえの位置情報送れ。今すぐ。俺もそっちに行くから!」
スマホの向こうでは、兄貴が誰かに電話しているみたいだった。そんな音がしていて、相手に繋がったのか兄貴はそいつに「緊急事態だからはやく行くぞ」と言っていた。
俺は急いで通話を切り、自分の位置情報を送信する。
あとは兄貴を待つことしかできない。
俺にはもう、何もできない。できることは何もない。本当に…こんなんじゃただの役立たずだ。でも、どうすれば。こんなとき、兄貴ならどうする?自己嫌悪なんてしている場合じゃない。考えろよ、もっと。
兄貴なら、まず…予測する。
ある程度、状況を想像して仮説を立てる。
でも、そんなの俺には無理だ。



