足が重い。
頭が痛くて、体は言うことをきかない。

どうしようか。
いったん家に戻ろうか。
「何しているの?早く学校に行きなさい」
そう声を荒らげる母の顔と声音が脳裏を掠めた。
やめておこう。
ただでさえ1ヶ月も高校を休んでいるのに、これ以上迷惑はかけられない。しかも入学して数週間で早々に人間関係で躓いて不登校だなんて、言えない。だって、格好悪いじゃん、そんなの。
だからといってこのまま外にいてもこの制服じゃマズいな。平日の昼間に制服は、嫌というほどに目立つ。
今日からはちゃんと行きます、だなんて言わなきゃ良かった。こうなったら、あの手を使うしかない。


それから少しして。
私は普段着で街をうろついていた。家の裏口からこっそり入って着替えただけである。
バレなくて良かった。
今、私が歩いているこの辺り、私が通う高校の周辺は何というか、治安が悪いような地域だ。コワイ人達がうろついているらしいけれど、私はまだ会ったことがないし、たぶん大丈夫。
人目を気にせず読書できる場所でも探そうかな。変なやつに絡まれても困るし…


「てめぇ…どういうつもりだ」
ドスのきいた声がした。私のすぐ近くで。路地裏の方からした声。気になって仕方ない。
気配を消して、そうっと意識を集中させた。