え。どういうこと?
もう私の頭は何も受け付けなくなっていて、考えようとするだけでしんどかった。悠希さんは私のことも心配しつつ、その理由を説明してくれた。
「さっき見せたあんたの偽アカウントに幾つかメッセージが届いてたんだよ。詳しい内容は省くけど、出歩くのはかなり危険だ。家がバレる可能性だってある。もしも相手が複数人いたら、たぶん美織さんを守りきれない。学校も安全とは言い切れないし。だから、少し学校を休んでもらうことになるけど…」
そう言った彼に私は「大丈夫です」とだけ告げておいた。もともと休みがちだったし、普段とさして変わりない。
こんな話を聞いておいて出歩きたいとも思わないけど。
「ストーカーの件が終わったら連絡するから。それからいじめっ子をどうやっつけるか一緒に考えよ!それまでは家にいること。いいね?」
何度も釘を刺されたところで、話は終わりとのことだった。私はスマホの電話番号だけを伝えて椅子を離れる。
「ありがとうございました」
そう言ってドアに手をかけたとき、自分でも何故だかよくわからないけど、ただなんとなく彼の方を振り返った。
目の前には悠希さんがいて。
その後ろの、部屋の奥に人影が見えた気がした。最近どこかで見たような、誰かにそっくりなような男の人。
本当に一瞬。ほんのちょっとの間だけ。
「どうかした?」
悠希さんの声がして、ようやく私は現実に引き戻される。改めて見ると、そこには人影はもちろん、何もいなかった。
何だったんだろ…
「何でもないです。じゃあ、さよなら」
「うん。気をつけてね」
ばたん、とドアを閉めて私はゆっくりと歩き出した。



