え?何これ…
戸惑う私をさらに困らせたのは、意外すぎる彼の姿だった。


彼の腕が、少し震えているように感じたこと。

それと、口を開いた彼の、そのきれいな声がいつもと違って真剣だったこと。
他にもあったのかもしれないけど、びっくりして動けない私にはその程度の察知が限界だった。

「あ、あの…」


うまく声が出なかった。
それくらい、私は動揺していたんだと思う。

「確かに、結人くんを巻き込みたくないって気持ちはわかる。美織さんにとって彼がどういう存在なのか、詳しくは分からないけど、あんたに近ければ近いほど彼も危険だろうから。でも…」

言葉に詰まりながら話す悠希さんはなんだかしっくりこない。
あんなに明るい人なのに。

「でも、加害者(あっち)側の視点になんか立たなくていい。美織さん。あんたは間違ってない。だからそんなこと考えなくていいんだ。あんたは、何も間違ってないから。──大丈夫。今度は俺らが守るから」

その言葉は、私の中まで染み込んでいって。
全身を駆けめぐるように、私の中に残り続けて。

ちょっとだけ、何かが軽くなった。
そんな気がした。


やっぱり、私は助けられてばかりだ。

「あ。ごめんね?急に」

悠希さんは我に返った様子でするりと腕を下ろした。珍しくあわてている。彼自身も戸惑っているようだった。