アオハルさん。

この街では、その名前を知らない者は恐らくいないでしょう。困ったことや独りでは抱えきれない悩みがあったとき、助けてくれるヒーローみたいな存在。
でも、その素顔は誰も知らないのです。
分かっているのは「アオハルさん」という名前だけ。街にはいろいろな噂が飛び交っていて、「本当はヤクザなんかと繋がっている」だとか、「自殺を試みると現れる死神の使いっぱしりなんだ」といったように、本当に様々です。

謎に包まれたその人物はどう考えても怪しさ満点なワケですが、それでもアオハルさんを頼ろうとする人は案外多くいるようです。実際、私もその中のひとりですし。怪しくったって何だって、そんなのどうでもいいんです。さして重要じゃありません。
助けてくれるなら、誰だっていいんです。
それこそ、ヤクザだとか死神だとしても。
まぁ、その人に出逢うことなんて出来ないんですけどね。

だって、「アオハルさん」のことを知る人なんて、結局のところ存在しないのだから。