「立花さん…立花さん…」
振り返ると先生が傘をさして立ってた
目が少し冷ややかだった
「…バカじゃないの?」
「え…」
「午後からも授業あるのに…」
私は髪も顔も濡れてた
もちろん制服も
「ハンカチあるの?」
先生がハンカチを差し出してくれた
「あ、あります!」
私も慌ててポケットからハンカチを取り出した
先生は私の肩を拭いてくれた
学校から昼休みが終わるチャイムが聞こえた
「あ…」
「ごめんなさい
先生、5限授業ありますか?」
「いや、オレはないけど…」
「よかった…
でも、お昼食べれなかったですね…
コレ、よかったら食べてください
私のお弁当
毎日自分で作ってるんです」
気付いたら私は
先生のビニール傘の中にいた
近かった
「よくないよ…
立花さん、授業間に合わない」
先生は少しあきれて言った
「とりあえず学校戻ろう」
「はい…スミマセン…
あ!先生!」
「なに?」
「ほら、見てください!」
ビニール傘越しに見る桜が
とっても綺麗だった
傘に乗った水滴がキラキラして
こんな風景はもぉ見れないと思った
今じゃなきゃ描けない
「先生!ありがとうございました
先生が言ってくれなかったら見れなかった」
「うん…」
先生は怒らないでくれた



