「立花さん」
振り向いたら鈴木先生がいた
「美術室に来たら、
立花さんいるかな…って思って…
ちょっと、話したくなった…」
なんだろう…
水嶋先生のこと、なんか言われるのかな?
「ここ、座ってもいい?」
「はい…」
先生は私の隣の椅子に座った
「翠が好きになったのは
立花さんだったんだね…」
「…ホントに好きだったのかは…
わかりません…」
先生が私を好きだった証拠は
絵から伝わる私の憶測しかない
「ホントに、好きだったよ…」
「でも…」
なんで私を置いていなくなったのか
今でもわからないんです
ホントに好きだったら
そんなことしますか?
「翠がこの学校に来てすぐ
美術部の生徒の話をしてた
…
すごく楽しそうに話してた
絵と桜が好きで
お花みたいな名前の子だった記憶がある
…
お互い新学期で仕事が忙しくて
なかなか会えなくなって…
…
別れよう…って言われた
…
桜の花弁が、翠の髪についてたから
春って憶えてる…
…
きっとまた
あの子と桜見てきたんだな…って」
あの日…
先生は鈴木先生に別れを告げたのかな
私が先生に気持ちを伝えた日
さようなら…って
片思いになった日
「でも‥ホントに好きだったら…
急にいなくならないと思います
私、何も知らなかった」
「うん…
秋になって同僚から
翠が教員を辞めたって聞いたの
…
だから
美術部の生徒と付き合ったのかな…って
思ったんだけどね…」
私と先生は
付き合ってなかった
好きって言ってくれたし
キスもしてくれた
でも
友香と小林くんの関係とは違った
「一緒に働いてた時もね、
結構生徒から手紙もらったりしてたんだよ
…
私もヤキモチ妬いたりしてた
…
でも、生徒のこと好きになるなんて
絶対ありえないって言ってくれて
もし好きになった時は
教員を辞めるって言ってたの
…
だから、ホントに立花さんのこと
好きだったと思う
…
好きになってしまったんだと思う…」
信じていいのかな?
鈴木先生の言うことを
水嶋先生のことを
でも
先生を辞めた先生は
私の前からいなくなった



