「おい、ミナ。そこのハサミを取ってくれないか」
《かしこまりました》

時代は52世紀。
地面には地球外生物が歩き回り、遥か上空を見上げれば、昔にUFOだと騒がれていた飛行船が優雅に飛び交っていた。
そんな時代、家庭に1台は常識だった家庭用ロボット。56歳で、白髪混じりの男、宗一郎も、それを持っていて、名前をミナ、とした。

「ミナ、どうした?早く持って来てくれ」
《かしこ、まり、ました》

返事はするものの、動こうとはしない。

「はぁ…。またか」

家庭用ロボットの寿命はせいぜい30年。宗一郎が二十歳に購入したミナは、もう36年も使っている。

「やっぱり買い替えるべきか…」

かと言って、いつ死ぬか分からないのに買い替えるのはもったいないと思ってしまい、約40年もミナと生活してきたため、すっかり愛着がついてしまっていた。