屋上を出ても理苑はどうしても教室に戻る気分にはなれず昨日の裏庭のベンチに座った。
葉の繁った大きな桜の木が真上にある。
ふうっと深呼吸をするとザワザワとしていた心が落ち着いた気がした。
ふとスマホが震えているのに気が付いて分のスカートのポケットから取り出した。
「もしもし?」
『あ、理苑!起こしてよ!先に行かないでよもう!』
余りの音量に理苑は眉間に皺を寄せた。
「ちょっと紫苑煩いよ。それから紫苑、昨日帰ってくるの遅かったでしょ?疲れてると思ったの。」
『あ、そっかありがと。』
「ん、いいけどまだ家?」
『うん。今起きた。』
「遅刻するよ?」
『いつもだから大丈夫。それよりも朝ごはん作ってくれてありがと。』
「大丈夫じゃないと思うんだけど。うん、どういたしまして。ちゃんと食べてきてね。」
『うん。あ、体調大丈夫?』
「ん、大丈夫。調子良いよ?悪かったらちゃんと言うから。」
『うん、じゃあね。』
「ん、じゃあまたね。」

