屋上海月 〜オクジョウクラゲ〜





「 "Trick or treat!"
お菓子くださーい!! 」


「 ―― ぅおおおおぃっっ!! 
王子いいぃいっ!来たアアアア!! 」




飲み屋が集まるビルの狭間
小さなエレベーターが開くと
すぐに"MASAYA'S BAR"の看板


奥にテーブル席がひとつ
長い店内は満員


カウンター前へ座っていた人達も
Tシャツ姿のマサヤさんの様子で
俺達が並んで座れるように
少しづつ席をずらしてくれた


「 王子ぃいい!
早速ケーキ食うかあああ? ! 」


「 ぜったい食う! 」


「 絶対食うって…
おっ前、相変わらずパワーあるよなあ
あっ!そうだ!
開店の時は、お花サンキューな! 」


「 ううん!おめでとうございます!
直接来られなくてごめんなさい! 」


「 いいよぉ!
王子が忙しい事は
じゅ〜ぶん分かってるしさぁ
俺もこの通り、独りで店まわしてるんで
ちゃんとした御礼返しも出来なかったし

だから今日は、俺のオゴリ!
三人共、好きなだけ飲んでってな! 」




間接照明の、柔らかいあかり
流れている曲は "Moon river"


「 なんか…
マサヤさんっぽいお店だね 」


「 なんだよ
せせこましいってかぁ? 」


「 ちっがーう! 」


「 まぁ、今日は祭だし、特別混んでるよ
普段は会員制だし、まったり飲む感じかな

人との絡みっていうか…
繋がり、大切にしたかったしね 」