屋上海月 〜オクジョウクラゲ〜




宙空に浮かぶ、ジャックランタンの明かり


オレンジ色した
ハロウィンタウンの中通り
仮装した人の賑わいも増えていて

手先に下がるのは
電気仕掛けの、小さなカボチャの灯




「 駅前のほうは…
違う街みたいに変わっちゃったけど
この辺は、ぜーんぜん変わってないや 」




ここから少し歩けば
かなり様変わりした、駅前大通り
そこから道を行けば、すぐに歌舞伎町


更に一本、裏道に入れば
通称"EDEN"と呼ばれる歓楽街がある


しかし元々、この界隈は
結束と個性の強い"男社会"で
部外者が介入して来る事を嫌うと聞く


そのせいなのか
道行く人も 慣れた風情で
"今日は、いつもの場所の
特別なお祭り"といった表情だ




「 ――― 次は…あそこ! 」


あずる自身も、見知った庭先

黒いマントの裾を、魚の様にひらつかせて
とても楽しそうに 靴音を響かせている




そうして、幾つかの店を廻り
連なるキスマークのチェーンと
手作り菓子が、あずるの腕の中


「 あとひとつ! 」