屋上海月 〜オクジョウクラゲ〜





「 そしたらね、あの子…

見た事も無い位、切ない顔して笑うのよ…

もうホントに
ひっぱたいてやろうかと思った…
十七、八の餓鬼がさ
しようとして出来る顔じゃないんだもん…


でも、だからこそ …―――

アタシはその時
水谷と一緒に居る事を奨めたわ

そんな恋は身を滅ぼすだけって
大昔から決まってる事だもの… 」




ステージで 歌が終わった


大きな拍手の後
スポットライトが消え
再び店内は、笑い声に包まれる




「 ――― で?どうなの?

アンタはあの子に惚れてるの?
返答次第じゃ、すぐにこの店から
出ていって貰うかもしれないけどね 」




「 あずるの最後は、俺が看取ります 」




「 ―――… っぷ

あはははははははっ!!
"俺が守る!!"とかじゃないんだ?! 」


「 俺は…
そんな大それた人間じゃありませんから 」


「 この…馬鹿だねえ!
女の子ってのはね、嘘でもいいから
そういう台詞、言ってやれば喜ぶの!

… まったく
どうしてこんな奴好きになったのかねえ

あの子なら、より取り見取り
幾らでも周りに良いオトコいるだろうに 」


「 俺も、そう思います 」


「 ――― ああ笑った…!!
笑いすぎて涙出て来ちゃったわよ…

でもまあ
今日ここへ呼んだ甲斐はあった…

それ、是非言ってやんなさいよ?
あの子や…アタシらなんかには
もう最高のプロポーズ、愛の殺し文句だ


… ああ安心した!…良かった!
それならいいんだ!

アタシはこれでも
あの子の親のつもりだからね
―――― にしても… 」


「 はい 」


「 …いや、急にね

ほら
前から気になってた事ではあるんだけど
あの子は何で、リュウジくんの事だけ
忘れちまったんだろうと思って … 」