屋上海月 〜オクジョウクラゲ〜




「 ちょ…そんな真剣な顔しないでよ!!
アタシMだから惚れちゃうじゃないの! 」


「 真剣だったのは、貴女もです 」


「 って、やあねえ!!
もっと会話をクールに
軽く流せるタイプに見えたのに…

まあお互い様だけど…
あずるの事だから、仕方ないのかな


―― 冗談は置いといて
挨拶にさ、来たのよ 水谷がね
あずるを連れてさ 」


「 …… いつ?」


「 そうねえ〜
あずるが有名になり始める少し前かしら

突然店を辞めた詫びと
芸能界に入った報告にね


大人になったせいなのか
… それとも彼の中でも
あの件が強く影響したのか
見違える位になってたのよ

あずるを見る眼も、本当に優しくて…


その時はね、暫くしたら
何処か、片田舎にでも行って
二人で暮らすなんて話もしてたの 」




「 ――… 」


「 けどね…
あずるの水谷に向ける眼は
愛情ではあったけど
決して、恋の瞳じゃなかった…


… だから、聞いたのよ

"あなた、好きな人いないの?"…って 」