屋上海月 〜オクジョウクラゲ〜




「 あの子が一緒にいるからには
… あらありがと

お酒すすまないのね、車で来たの?
好きじゃないなら
別のすぐに用意するわよ
ウーロンでいいかしら


… そうそう

あの子が一緒にいるからには
何か良い所があるんだろうって聞いたのよ

そしたら、元々あの子って
妙に要を得ない話し方するけど
"熊の傷を治してくれた"って言ったのよ 」




「 ―― クマ? 」


「 そう、熊
どうもぬいぐるみっぽいの

彼はバンドの衣装も
自分で作ってたみたいだし
修理か何かしてくれたんでしょうね


そして…高校に入った頃から
どんどんあの子は可愛くなって

最初はね?
普通に迎えに来てたりしてたのよ

彼がおかしくなって行ったのは
ちょうどその頃かしら…


酒飲んでその辺で倒れて
その度にあずるが支えて帰って…
…恋心とか
心情的に色々あったかもしれないわね

何しろ、嘘か本当か判らないけど
一緒に暮らして長いのに
ヤられた事、一度も無いって言うんだから




まあそれでもさ
ある意味大切にしてた訳だし

…この街であんな容姿した娘が
どんな毒牙にもかからなかったのは
"水谷タカオ"と一緒にいたお陰よ

普通なら、とっくのとうに
洗いざらい喰われちまって…
どこかに沈んでたっておかしくないわ 」