地を這う様な
低音の笑い声に囲まれて
灰谷は一瞬、戸惑った表情を見せたものの
「 行って来るね!」と
明るい笑顔を向けたあずると一緒に
更衣室の扉へと入って行く
「 大丈夫よ
―― 誰にもアタシの店で
妙な真似はさせないから
さ、座って 」
オレンジ色
名も知らない花とカボチャが
綺麗にレイアウトされたテーブル横
ランプと酒が置かれた席で
オミヨさん自ら、酒を作る
煙草を口元に取ると
すぐにライターが向けられ
タイミング良く、自然に火が点けられた
「 …ありがとうございます 」
途端に ふ と、オミヨさんの表情が緩む
「 接待役が
こんなお婆ちゃんで御免なさいね 」
「 ―― いえ、そんな事は 」
「 ホントはねぇ
若い子の方がいいってのは
充分判ってるんだけど…
それをすると、私がやりたい店の方向と
かなり変わって来ちゃうのよね
最近はねぇ
マイノリティはカッコイイと思ってる
ファッションゲイばかりで…
すぐに店をやめて行っちゃうの
でもそれは ―――
今の時代、どの水界隈でも同じね
オシャレして笑っていれば通用すると
流行りに乗って、この街にやって来ては…
生まれて初めて痛い思いをして
田舎に帰って行く子も多いの
――― あらやだ!!
団塊の愚痴だわこれじゃ
それもこれもリュウジ君が
語らせる雰囲気あるからいけないのよ!
あ、アナタ、南瓜の煮物はお好き? 」
「 はい 」
「 そ、ならよかったわ
… 前は水一杯で
お構いも出来なかったけど
是非楽しんで行って頂戴ね 」


