午前のイルカショーが終わって
アシカが寝そべり、ペンギンの遊ぶ
野外広場を歩いていると


彼らの餌を狙う鳶達が
砂浜と水族館を仕切る鉄柵の上で
中の様子を伺っている




あずるは灰谷と一緒に
携帯で画像を開きながら

その違いを見比べて
感心したり、笑ったり




「 おや、レストランはいっぱいだなぁ 」




昼、そして日曜なのもあって
硝子張りのテラスは、かなりの賑わいだ




「 …あっちに、自販あった 」


「 よっこらしょ!
僕、一休みしながら順番待ちしとくよ
回って来たら、携帯で連絡する 」


「 ――― すみません 」




レストラン入口横

椅子に座りながら腰を叩く
梅川さんの言葉に甘えて


中廊下を隔てた別棟


水槽の並ぶ、幻想的な明かりのフロア
その一画にライトアップされた
ソファのある、休憩所に向かう




「 …こっちは、客層違うね 」




ゴトリと落ちた缶を
自販機奥から取り出して
熱そうに手で玩ぶ灰谷の目は
各々水槽を眺める 二人連れへ


確かに、今までいたエリアには
家族連れや 子供達の姿が多かった




「 三人で、手でも繋ぐか? 」


「 ……… 」


灰谷は俺を、呆れた様に睨み
あずるはそれを見て、クスクスと笑う




「 …アズが真ん中ならいいよ 」


「 私子供じゃないもん 」


「 …ブラックコーヒー飲めない癖に 」


「 トオヤだって
チーズ苦手でしょー 」


「 …チーズは人間の食い物じゃ無い 」


「 喧嘩すんな
あずるも灰谷も、変顔やめなさい 」


「 すごい? 」


「 …誰も『Azurite』だって
思わないと思うよ 」


「 トオヤだって
誰も"CheaーRuu"の灰谷って思わないかも 」


「 …このままレストラン入る? 」


「 わかった! 」




喜々として歩き出す、二人の首を掴んだ