一人ぼっちの少女の元に
ある日、父親が現れた


彼は有名な音楽家で
尚且つローグウェルと呼ばれる
世界的な富豪一族の一員でもあった




世間から見れば煌びやかな
とてつもないシンデレラストーリー


けれどその永い歴史を裏返せば
血と略奪と、同族の潰し合い


その富を巡った黒い渦が
一人の少女を待ち受けていた ―――




マンハッタンに渡ったのも

海外進出が決まり
あずるが渡米したその日に起きた
空港での、替え玉すり替え事件や

真木の機転で回避された誘拐事件
そんな様々な出来事が発端で




灰谷が怪我をしたのも

Globalに縛られていた俺の身が
自由にあずるを捜せる様にと考えた
かなり危険で目茶苦茶な
灰谷の献身行為があったからだ




「 … ただいま 」


「 おかえりー! …あれ? 」


「 … コンビニ行こうと思ったんだけど
盛大に財布忘れた… 」


「 あはは 」


「 … アズ、ご飯頂戴 」


「 はい!」


「 うん!
皆で食べよう!いただきま〜す!」


「 いただきまーす! 」


「 なんかこのお醤油おいしい? 」


「 伊勢の醤油だってー 」


「 お中元で貰った 素麺と一緒に 」





――― 灰谷が心配しているのは
そのローグウェルの、一部の親族


真木は空港で
先代の愛人一族率いる
数台の黒い車に襲われ
あずるを連れて、車で逃げた




そんな窮地に陥った時
助けに現れてくれたのが
灰谷の言う"ローグウェルの奴ら"

あずるのお祖母さんが差し向けてくれた
元軍人や傭兵揃いのボディーガード達で


愛人一族は捕まったものの
今でも用心の為に
この付近を見張ってくれている




聞くと非現実的な話だが
これがあずるを取り巻く現実だ




「 … そうだ、アズ 」


「 ん? 」