「 ―――…… 」
「 …けどあの辺は
スタジオもあるし音楽人口も多い
ピック自体も量産タイプで
大きな楽器店ならどこでも販売されてる
ただ ――― 」
「 ただ?」
「 誰かは知らないけど ――
あの事件を覚えていた警察関係者が居て
個人的に聞き込みしたりしてたみたい
でも佐伯が死んだ日
その日、その時間の皆のアリバイは
これ以上無い程に証明されてた
何しろ当日夕方、新宿の巨大モニター
皆総出の野音ライヴが
大々的に生放送されてたんだから
まあアズが、世界の巨匠
エリックスラストファーの娘だったり
うちや真木さんの家関連
それらが判明して行くにつれて生まれた
微妙な諸事情もあるんだろうけど
貴方や皆への疑いは綺麗に消えて
佐伯については捜査の関係もあったから
それ以上横槍出すなの指令があって
以降、動いてないみたい 」
「 ―― なら、何を気にしてる? 」
「 …ぶら下がっていたのはモミの木
それに当初は死亡推定日自体
もっと前だと思われてた
… ずっと近くのカフェから
スポットが当たってたせいでね
急速に腐敗した佐伯リツコの身体には
別名、星の瞳と呼ばれる青い野草が
ビッシリと根を生やしていたそうだよ
… これ聞いてさ
貴方は何も、思わないの? 」


