俺と灰谷は月の下


あずるは梅川さんに
台所で止められている




「 …俺が知ったルートと
梅川さんが知ったルートは違うから
少し相違はあったけど

公安委員会が動いたからね 」


「 ――… 公安? 」




「 うん…
少し気になる事があって
親父のPC、内緒で弄ってたらさ


佐伯の家っていうのが
若者向けの事業展開してる
表向き、普通の会社なんだけど


…昔から少女売春や拳銃密売
クスリの横流しに絡んでるのが
ここ最近、判って来たらしくて


だから仮に、佐伯リツコが
誰かに殺されたんだとしても
そういう関わりある所に
狙われたと考えるのが自然


それがどう俺達に絡むのかって言うと


当時真木さんは、佐伯に対して
訴えに掛かかろうとしてたんだ


でもアズの容態が安定した頃
アズの父親が海外に連れて行き
貴方達側からすれば
アズは行方不明になったでしょう

本人不在じゃどうしようもないし
結局、未成年同士の事故って事になった…




今となっては当日の記録なんて
小さな新聞記事くらいで
そもそもアズの本名も載ってない


そんな状態の中で
今の貴方達と佐伯を結び付ける

疑いが掛かる様な物なんて
ほぼ残っていない筈だったんだ 」




「 はず…?
疑いが掛かってるって事か…?」




「 …佐伯が死んでいた場所はね

いい具合に生け垣があって
通勤や駅に来たついで
家庭ごみ、粗大ごみを捨てるのに
かなりお気楽な穴場になってたんだ


事件性は薄いって事ではあっても
一応鑑識は、その場所も調べるでしょ


テレビ、携帯、ペットボトル…
あらゆる物が捨ててあったけど


…死体の上に
"CheaーRuu"のピックが落ちてた 」




「 ―― ピック?」


「 "CheaーRuu"青山モデルのピック
貴方が使っているのと
全く同じタイプの物だよ 」