屋上海月 〜オクジョウクラゲ〜




「 ――― ほら 」


「 わーい! 」




手を繋いで、夕暮れの外出


ニット帽に伊達眼鏡

俺には少し小さかったモッズコートを
薄手のセーターの上に羽織り

スカートに
ブーツ姿のあずるを抱えながら
屋上の扉に、鍵をかける




「 あのね? 」


「 ん? 」


「 他の子抱っこしちゃだめだよ…?」


「 しないよ 」


「 キスもしないでね? 」


「 しないって 」


「 したら、他の人とえっちする 」




「 ……あずる 」


「 うん 」


「 …そういう事は冗談でも
お前に本気で惚れてる人間に言うな 」


「 …ごめんなさい
でも私がエスパーだったら
リュウジの周りの女の子
多分真っ黒になって燃えてるよ? 」


冗談めかしてはいるが
目が本気だ




「 一生一緒だよ? 」


「 …死ぬ時も一緒って言ったろ」


「 やだなぁ… 」




「 ―― あずる…? 」


碧い目にどんどん
涙が溜まって行く




「 … リュウジの…
そんなの…考えるのもやだなぁ… 」


「 じゃあ考えるな ほら 」




泣きじゃくりながらしがみついて来る
細い肩 小さな体を抱きしめて
自分の胸へと、思いきり押し付ける




荒くなる息


髪を撫で 首筋


甘い香り


胸のボタンを外し 鎖骨にキスして




自然に


けれど急激に起こった体の中の嵐に


自分自身 驚き 戸惑う ――――




「 あずる… 我慢 出来ない… 」


「 …リュ…?  ん…」


「 …嫌ならやめる 」




返事代わりの激しいキス
必死に首へ回される、細い腕




屋上と階下を繋ぐ狭い階段


お互いの吐息だけが反響する
もう俺とあずるしか住んでいないビル


他には何も 聞こえない筈なのに ―――