屋上海月 〜オクジョウクラゲ〜





あずるは枕元の外着に
腕を通しながら、携帯のボタンを押す


「 "ビーフと…クリーム…
どっち が いい ですか はてな" 」


いちいち内容を口にしながら
打つ姿が可愛い


なんなら両方作ればいいと

言おうとした所で
すぐにあずるの携帯が鳴る




「 早いぞ灰谷 」


「 "カボチャがいい" って! 」


「 カボチャ? 」


「 うん!
カボチャ茹でて、裏ごしして…
生クリーム入っててね
すごくおいしいの!あ 」




またすぐに、同じ着うた


「 何だって? 」


「 "あなたがつくるものなら
なんでも、いいよ" 」


「 ――― あいつ…
口上手くなったなあ…
合コンで鍛えたか? 」


「 あはは! 」




本来灰谷は合コンやその手に
熱心に行くタイプではないけど




大学は、高校までと違い
自分で選んだ講義の時間を調べ
自分で作った時間割を、学校側に提出する


今、学生証が出欠認識カードになっていて
旧き佳き時代の様に
代返を頼んだり出来る訳ではなく
かなりシビアな現状らしい


だから個人主義でいいかと言うと
そういう訳でもなくて


特に、灰谷の選んだ学部は
先輩のノートの存在がかなり重要で
その宛を付ける為の付き合いもある




頭を拭きながら
テレビを見ていると
午後のワイドショー


表題テロップには
"都会の夜の天使たち"




繁華街


足元だけを映された、十代の女の子達が
甲高い声でインタビューを受けている


『ぇ〜?親とかウザぃじゃん』
『一番欲しぃのはぉ金〜!!』
『腹減った〜!キャハハハハ
昨日から〜何も食べてなくて〜』
『エンコー?してますょ〜
体とか別に〜
何で色々ぃわれるのかわかんなぃ』
『チョーウザぃょね〜』