だからきっと
『そういう意味』なのだろうと




「 …リュウジ? 」




戻って来た部屋


俺の顔を、心配そうに覗き込む碧い目




――― ユカちゃんや
灰谷の心配をする事で
あずるにしてやれなかった
埋め合わせをしている事は
自分も途中から自覚していた


無意識に開いていた携帯を閉じ
そのままあずるを抱きしめる




この子が失った時間


止まったままだった 19の夏の日




一番幸せにしてやりたいと願った女の子が
こうして今、俺の傍にいる ―――




あずるは 俺が知っている誰よりも
我慢強くて、淋しがりやだ



それを手放しで、全て受け止められる様に
何年もかけて 足場を作って来た




その為なら


俺達の音楽を否定し
せせら笑う男達に頭を下げる事に
何の躊躇もなかった ――――




だけどそれは、あずるも同じだ


急激に上り詰めて行く程に
脆く、不安定になる階段


見えないガラスの破片が
この小さく白い手足に


心にどれだけ刺さったのかは
同じ世界にいるからこそ、痛い程解る




「 あずる

昨日入ってないし
出かける前に、風呂入ろうか
一休みしたら買い物行こう 」


「 はい! 」