マンション前に
横付けされていた車
竹田さんが
後部座席にゆっくりと乗り込んだ時
「 ―――… 竹田さん!!! 」
あずると灰谷が
呼び止める声は同時だった
「 …どうした?坊ちゃん 」
けれど灰谷は
思い返した様に唇を噛んで
そのまま独り
口を閉ざしてしまう
「 おじいちゃん…! 」
「 おう 」
「 梅川先生は…
先生は…あの…
―― コンサートで
私が具合悪くなった時とかも
それにトオヤの勉強も
ずっと見てくれてたんだよ!!
すっごい難しいの…!!
そ、それで… 」
「 知っているよ 」
「 ―― せんせいは…
スイカとかお魚…
持って来てくれたよ… 」
「 あずるちゃん 」
「 ハ…ハルトは
あんな事言ってたけど
私…もうここに帰って来た
だから ――― 」
「 まあな
ただよ、男には
ケジメってもんもある
今回はいろんな人達が
大変な迷惑被ったんだぜ
お前らの気持ちひとつ
って訳にも行かないやな 」
「 ――… 」
「 竹田さん 」
「 青ちゃん
早く、中に入れ
一雨来そうな雲行きだ 」
「 ――― カレー
また一緒に食いましょうと
梅川さんに、伝えて下さい 」
ただ 扉は閉められ
運転席の鵜野さんが
軽くクラクションを鳴らして
走り去って行く
「 … 青山さん、俺… 」
「 リュウジ 私…―― 」
冷え切った 二人の体を抱きしめた
「 何も言わなくていい
戻ろう ―――
皆、待ってる 」


