屋上海月 〜オクジョウクラゲ〜





「 奴にしてみりゃ、これ幸いに ―――
って言っちゃあいけねえんだが


青ちゃん、あずるちゃんも
今誰にそう思われた所で
さして不思議じゃない環境に居る


それを利用して
今回の騒ぎを起こしたって訳だ






――… 青ちゃん
あんまり、驚いてねえな


俺はてっきり
"あずるちゃんへの、年甲斐もねえ恋
その相手、青ちゃんへの嫉妬"

そう…思っちまってたもんだからよ 」




「 驚いてますよ、でも 」




―― 梅川さんが、あずるを見つめる目は
いつだって 本当に優しかった


他意の無い、正直で 真っ直ぐな ―――




あれは 恋じゃない






「 …あいつはな
お医者の家系、お医者様になる為の道


何もかもを
本当にずっと我慢しながら
勉強だけして歩いて来た人間なんだよ




なのに


やっと辿り着いた
光溢れる場所だった筈の
その世界からも追い出され
暗い裏道ばかりを歩いて来た


だからこう…上手く言えねえけどさ…




梅川にとってはここが


―― 青ちゃん達が初めての
光だったのかもしれねえなあ… 」