屋上海月 〜オクジョウクラゲ〜





「 本当に
ここでいいんですか? 」




部屋の半分だけ電気を点けて


普段、殆ど使われる事の無い
洗面台の蛇口を捻る


暫く水を流して


埃を被っていた
輸入ビールの口を洗った




「 いいよ
あまり年寄り扱いするな

『お菓子の家には子供』って
お話の相場は決まってら



――… お菓子の家っていや


今回の件について
ちょいと韻を践んでるかもしれねえな 」




「 … 菓子? 」




「 あいつがここで何してたかは
灰谷って子に、あらかた話は聞いたよ




早い話がよ ――――


どうして梅川の野郎が
あんな事したかってのは


"何かまた事件が起これば
皆のそばにいられる"


そんな、馬鹿げた理由からだ 」