屋上海月 〜オクジョウクラゲ〜





屋上に立ち
無言で カメラを回す池上




「 ありがとう
どうしても次の作品に
ここからの空が欲しかったんだ 」




かたやあずると池上さんは
陽射しの中に菓子を拡げて
まるでピクニック状態だ


「 …うまっ! このパイウマっ!!
アズさん、これ食ってみて! 」


「 うぁホントだ! うまっ!
赤池さん、こっちも美味いよ!
… あれ?
緑川さん、…ねちゃった…? 」




緑くんは、来て早々
テーブルの上に書類を出して
その途端、ソファで眠ってしまった




「 二人目の子が
夜泣き酷いって言ってたからなあ
奥さん、風邪ひいてて
ずっと緑川が面倒みてたみたいよ

少し、寝かせてやって貰っていいかな 」


「 うん 」




あずるはそっと その場を動いて
少し肌寒そうな体に、毛布を一枚かける


緑くんは一瞬、体を起こしたが
何かすまなそうに、一言三言 呟いて
毛布に包まり、再び寝入ってしまった




戻って来たあずるはご機嫌で
俺の背中へ




「 緑くん、何だって? 」


「 "クラゲ、綺麗だね"って
あと"三十分だけ寝かせて"って 」


「 了解 」




「 … ここ、落ち着くからねえ 」


「 うん、 だね〜 」




遠く、高速道路の音と 鳥の声

赤池さんと池上は 空を見上げる



「 そういえばアズルン
てるてる坊主、役にたったね 」


「 クウヤ、文化祭行った?! 」


「 行った行った〜
様子見てくるだけだなんて言ってたけど 」


「 クウヤって、ツンデレだよね… 」


「 あはははは 」