扉の前まで送る
ふと立ち止まった鵜野さんが
作業衣のポケットから出したのは
沢山のキャラクター人形がついた携帯
背面には、学生服の女の子と笑う
真新しいプリクラが貼られていた
「 ―― 娘さんですか? 」
「 あ、お、うん
来年はもう、高校だからなあ
少し早いけど誕生日だし
携帯買いに行く前に待ち合わせして
駅前の、ゲームセンターで撮った 」
「 仲、良いですね 」
「いやあ
普段はホント、知らん顔されてるよ
あれだ、機嫌取りだったんだろうな 」
そうは言っていても
普段いかつい 鵜野さんの表情が
プリクラと同じ、優しい笑顔に変わる
「 お、今度はそっちに電話か」
着信、真木
「 友達です 」
鵜野さんは微笑んで
階段を降りて行き
俺は扉を閉じ、携帯を耳にあてながら
どう説明をすべきなのか考える ―――
朝から昼までの出来事が
頭の中を巡った
「 ――― はい 」
『 よお!
センセーに
注射一本打ってもらって暫く寝たら
すっかり熱も下がっちまった
サンキュー! 』
「 ――… 梅川さん
行って くれたのか…? 」
『 お? おお
灰谷と一緒に
ガキ共の傷も見てくれて…
二人で、すぐに帰ったけどな 』
背後から 電車のベル
『 ゴメン、移動した
んで来週さ
池上が編集作業、一息つくから
また皆で、スタジオはいんねえか? 』
「 ――― もちろん 」
『 オッケイ!予約しとく!
そん時にでも、また連絡するわ
じゃな! 』


