鏡張りの空


葉を落とし始めた ポプラ並木
落書きだらけのガードレール


真木の言い付け通り
いつもとは違うルートへ




家電量販店の裏を抜け
明るい商店街の道


暫く真っ直ぐに行くと
いつも買い物をしているスーパーの裏手


よく車を泊めている
駐車場の砂利道に出た




「 ――― ねこ!」


あずるが指差す先に
茶トラの縞猫


夕べ雨でも降ったのか
小さな水溜まりが出来ていて
体を丸くしながら、水を飲んでいる




「 …アズ
あいつ、これ食うかな 」


「 どれ?」


「 …チーズ 」


「 多分、食べるよ 」


「 …でも俺、猫に嫌われてる 」


「 そんな事ないよ、ほら 」




「 …何でいつも
アズだと寄ってくんの 」


「 仲間だもん 」


「 … 何で 」


「 猫缶に詳しいから 」


「 … 意味わかんねー… 」


「 ペーストのはねー まずいんだよ 」


「 … 何その野性ミシュラン
ホントに食ったのかよ 」


「 食った まぐろあじ 」


灰谷はしゃがみ込んだまま
喉を鳴らして笑う


「 …あ 」


一瞬だけ


灰谷の足元に、体を擦り付けると
触れようとした少し先で
尻尾を立てながら ふいと離れて行った