すぐにあずるは立ち上がって
御品書きの貼られた壁
その下にある、給水機へ
まずカウンターにいる
真木や灰谷へ ひとつづつ
お冷やの入ったグラスを持って
自分の席に、戻って来た
「 アズルン、ありがとう! 」
「 ご飯、あそこの炊飯器から
お代わり自由だからね 」
「 了解 」
満足そうに、着席するあずる
向かい合わせた、池上と二人で笑う
「 は〜、食った飲んだ!
んじゃ皆もお疲れさん!!お先ね〜 」
「 お休みなさい 」
「 お疲れ様でした!」
「 おじさん、おやすみなさ〜い! 」
「 ―― あれ? 」
池上の声に振り返ると
炒め物や、テレビの歓声に混じって
入口の、引き戸が開く音
中年男性と
ちょうど入れ代わりで入って来たのは
多分、高校生くらいの四人組
中の二人は、ギター、ベース
黒いソフトケースを背負っている
もしかしたら
こんな時間、この場所へ
やって来たのは初めてかもしれない様子で
その場に突っ立ったまま
店内を見回し、少し戸惑っていた


