「お前のはさ、大事にとっておいたんだよ?

なのに、なんだよアイツ。お前のこと噛もうとしやがって。

アイツなんかに、先に飲ませたくねぇんだよ。

なあ、飲ませてよ」



アイツとは、もう一人私の眼の前に現れた、転校生の吸血鬼の事だ。



「でも、無理矢理にってのも嫌なんだよなぁ」



うっとおしそうに、ガシガシと頭をかく。

吸血鬼の存在を知らなかったわけじゃない、ましてや、こうちゃんが、吸血鬼だということを知らなかったわけでも無い。

ただ、ずっと私の血なんて興味無いんだと思っていた。

だからこそ、ここまで欲されると怖く感じてしまう。

あの紅い瞳が、私に向けられる日がくるなんて

自分が自分でないみたいに、声が出ない



「だって、こうちゃ・・・ん」



「アイツがさ、お前のこと本気で狙ってんの知ってんだろ?」



まるで、私の言葉に被せるようにまくし立てる。その瞳は、焦燥感にかられていた。



「お前が好きだからさ。アイツに噛まれるなんて論外だし。」



すっと、私の後ろの壁に置かれた左手。

理解ができずに1度フリーズし、動揺する私。



「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って、こうちゃんが私を?!好きなの?」



少し苛立ったように「だから、そうだって」と返す。


あまりに、自然と言われるから、まるで他人事のように思えてしまうけど、だんだんと全身の産毛が逆立つような感覚に陥り、体これでもかというくらい火照りはじめる。