1月14日、金曜日。


「咲良、おめでとう」


「絵梨花ありがと」


「はい、これ毎年恒例の」


「今年はなに?」笑


「開けてからのお楽しみだね」


絵梨花は私が大学生の時から誕生日プレゼントは服をもらっている。


去年はセーター、一昨年はサロペット。今年はなんだろう?


「ありがとう」


「本当はこれからお祝いしたいけど、無理よね?」


「そうだね、2人で過ごすからね」


「はいはい、また近いうちに2人でご飯ね!」


「それじゃ、またね!」


「ありがと絵梨花!」


「ポンポンッ」


「え、なに!?!?」


肩を叩かれ後ろを向くと夏来の姿が。


「誕生日おめでとう」


「覚えててくれたんだ、ありがとう」


「そりゃね、はいチーズケーキ」


「ありがとう、これ…高校生の時によく食べに行ったケーキ屋さんのケーキだね」


「そうそう、咲良も覚えてるんだな」


「うん、ここのケーキ本当に美味しいからね」


「それじゃ彼氏といい夜過ごせよ」


「え?」


「さっき咲良が羽柴先生に言ってたじゃん、2人で過ごすとか、それって彼氏じゃないの?」


「あー、うん、彼氏いるよ」


「そうだったのか、応援してるから俺」


「夏来…」


「どうした咲良?」


「ううん、もしかして……私のことまた好きになったわけじゃないよね…?」


「違うよ、でも咲良は忘れられない大事な友達だ、俺と咲良はいい友達だよな?」


「そうだよ、いい友達」


「なんかあれば相談のるから」


「ありがとう、私もう行くね」


「うん、じゃーな」


蓮斗の家に帰る途中、何故だか夏来と一緒に私の誕生日を祝ってくれた日を思い出す。


バスケ部全員が協力してくれて、部活終わりに祝ってくれて、盛大なサプライズだった。まさかの顔面ケーキされてからの大量のクラッカーで驚いて思いっきり尻もちした。みんなから笑われたけど、すごく楽しかった。夏来からはネックレスを貰った。ずっと制服の下に隠して付けていたけど、別れてからも忘れられなくてしばらく付けていたけど、同級生に夏来の彼女がいるって知ってからすぐ捨てたな…



最後は苦い別れになったけど、それを埋めてくれた蓮斗。


本当に感謝してる。


運転中なのに涙が……出る……


「あぁ……なんでだろう……」


なんで涙が出たんだろう……


蓮斗との別れを決めているのに離れられないと思ってしまう自分がいるからだろうか…


でも、決断したんだ、蓮斗の父親にもはっきり言ったし、この決断はお互いにとっていい未来に向かうことができるはず。泣かないで早く蓮斗の家に行こう。


「蓮斗帰ってきたよー」


「ハッピーバースデートゥーユー、ハッピーバースデートゥーユー、ハッピーバースデーディア咲良〜ハッピーバースデートゥーユー、おめでとう咲良ちゃん!」


部屋が小さなライト照らされて、ケーキを持った蓮斗がこっちに近づいてくる。



「はい、誕生日ケーキ」


「これ、蓮斗が作った?」


「そう、初めて作るスイーツが彼女のケーキだとはね、見た目はよくないかもしれないけど、味は美味しいから‼︎」


「作ってくれただけで嬉しいよ!ありがとう!」


「ほら、火消して」


ケーキの上にあるろうそく2とろうそく4を消す。


リビングに戻って、ケーキをテーブルに置く。


さすがに顔面ケーキはしないよね笑



「はいプレゼント」


「クリスマスの時もらったばかりなのに」


「クリスマスと誕生日は別々!」


渡されたのは1冊の本。


「なにこれ?アルバム?」


「付き合って半年だから記念アルバム作って見た、碧海の協力もあったけど、なんか女子っぽいな」笑


「めっちゃ写真あるじゃん…」


アルバムには、家で私が料理している時、本を読んでる時、ゲームしている時など何気ない日常の写真から、夜中に2人でコンビニに行くときの私の後ろ姿、休日に2人で遠いところの水族館に行ったときのツーショットなど、本当に半年の思い出が詰まっている。


最後のページをめくろうとしたら


「はい、ここまで〜、そこからはまた別の日に読んで」


「なんでー?」


「秘密」


「あーもういじわる、小悪魔!」


「そんなにいじけないで、ケーキの前にご飯だよな、てことで咲良ちゃんの好きなお寿司を頼んでました〜」


「なんで寿司?」


「羽柴先生に聞いた、誰にもいないところで、咲良ちゃんなにが好き?ってそしたらロールキャベツ!お寿司!中華料理!って言われて、ケーキは俺が作ると決めてたし、中華料理とロールキャベツはまだ俺には作れないし、お寿司なら買って宅配させようかな〜って思って」


「絵梨花…笑」


「お寿司も作ったものではないけど、特上のいいやつ買ったから食べてね?」


「蓮斗、ありがとう、いただきまーす!」


「これ、私の好きなネタばっかりじゃない?」


「これも羽柴先生から」


「絵梨花ーーっっ」


「咲良ちゃん、えんがわ、サーモン、タコ、貝類って渋い!」


「ほかにもあるじゃん、マグロとか穴子とかいくらとかうにまで!」


「俺が注文する時に咲良ちゃんが好きなネタと俺が好きなネタ半分半分入れた」


「さすが蓮斗」


「これで4人前になったからたくさん食べようね!」


「4人前!!!!でもいけそう、食べる!」






「蓮斗、ケーキ食べれそうにない」


「俺はたーべる」


「男の子はすごいな〜」


蓮斗がケーキに包丁を入れて、カットしていく。


私の皿には8分の1のショートケーキ、蓮斗の皿には8分の3のショートケーキ。


「俺が作ったのもなんだけど、これ美味しい」


「蓮斗、おいしいよ!」


「24歳なっちゃった〜」


「俺も今年は17歳〜」


17歳からの蓮斗は見れない。まだ希望届が決まったわけではないけど、転任は希望届に書いて提出した時点で確定だし、あとはどの高校に行くか、だけ。だから転任は決定したんだ。まだ誰もこのことは知らないし、3月末まで言えない。


「ねぇ、咲良?」


「咲良?」


「もう付き合って半年も経ったんだし、呼び捨てでもいいじゃん?」


「いいよ、蓮斗」


「ありがとう、咲良」


「蓮斗は今年の目標ある?」


「うーん、ないわけではないけど、まず咲良とずっと一緒にいること、バスケ部を日本一にすること、2年になる時はクラス替えもあるからいろんなやつと話してみたいかもな、俺基本受け身だから」


「受け身!?私の時には完全にドドドドSなのに!?」


「そんなに俺ドSか?」


「無自覚なの?無自覚が1番嫌だな〜、蓮斗は意地悪、ドS、優しい小悪魔だよ、これから悪魔になりそうで怖いけど」


「褒められてないな」


「本当のことを言っただけだよ」


「咲良の前ではなんかいじめたくなるし、咲良は俺のもんだから」


そんなこと言われると別れられないじゃん…


もう嫌だよ…やっとの思いで決めたことを曲げるわけにはいかない。


教師として、蓮斗の彼女としても考えた私なりのベストの決断。


私も蓮斗も最初は辛いかもしれないけど、時間が経てばまた別の恋ができるかもしれない。



きっと、お互い別々の場所で笑って過ごせる日々が来るよ。