艶やかな衣装を身にまとい、艶女の部屋は化粧のいい匂いが漂っていた。3人の艶女にはそれぞれ部屋が与えられ次女(じじょ)という付き人、言わば世話係が付く。それぞれの艶女は顔を合わす事なく、話し相手は基本次女のみとなる。将我は後妻の悠奈を1度も抱く事なく、夜な夜なその3人の艶女と寝夜を共にした。そんな将軍に対し悠奈は里に残してきた両親や兄弟を思って耐えるしかない地獄のような日々に1人涙をのんでは将季を育てた。

将季は8歳で他界した母の最後の言葉を胸に刻み、この城に仕える忍び佐護路(さごじ)の修行を受け強くなる為日々訓練を重ねた。10歳…丁度将我が悠奈を後妻に迎える頃、佐護路によって同じ修行を受ける仲間と出会う事となる。1人は父、将我の右腕として仕える勝倉大吾(かつくら だいご)の息子空我(くうが)。そして、身寄りのない村娘の鈴(すず)。この出会いが時期将軍となる将季にとって生涯掛け替えの無いものとなっていく。空我は父、大吾によって剣術を嗜んでおり、鈴は村で盗みをはたらき飢えを凌いできた為洞察力に優れ、足も早く佐護路の目に留まった。

『いぃか。此処では己の為に強くなれ。それがいずれ城の為、国の為になる。故に容赦なく修行を行う。決して、生きる事を諦めるなッ!付いて来れぬ者に情けはかけぬぞッ。』