明るくはしゃいでいた夕璃が部屋に引き上げてから、徹と光子も寝室に入る。
 
「徹さん、ごめんね。私、ユーリをちゃんと見てあげなくて。」

光子は真っ直ぐ徹を見て言う。

徹は静かに首を振り、
 
「俺が光子に寂しい思いをさせたから。」と答える。
 

「でも私はユーリのママなのに。自分よりもユーリのことを、考えるべきだった。」

光子の目は潤んでくる。

気丈な光子は人前で涙を見せることは少ない。
 


「ナルシスのこと聞いて。私、辛かった。ユーリがどんな思いで居たのか考えると。取り返しのつかないことしたと思う。」

徹は静に光子の頭を抱く。
 
「俺も辛かった。明るく甘えるユーリが意地らしくて。本当に反省している。ユーリにも光子にも。」

どうしてもっと早く、こんな風に話さなかったのだろう。
 


「今からでも、取り返せるかな。」

すがるように徹を見つめる光子に、徹は強く頷く。
 
「取り返すしかないんだ。全力で。」
 
「そうだね。」光子の目から涙が流れる。
 

「泣くなよ。俺も泣きたくなるだろう。」

徹は光子を抱き寄せる。
 

「この間、ユーリに泣かれたの。仕事を減らして家にいるって言ったとき。ユーリ、私に抱き付いて泣いたの。」

光子に涙を見せたことで、少しでも夕璃の心が軽くなればいい。
 

「色々、我慢させていたんだね。少しずつユーリが素直に自分を出せるといいな。」

光子の髪を撫でながら徹が言う。