あの時夕璃が

『ママ、お仕事しないで。一人は寂しいから嫌。ずっとユーリと一緒にいて。』

と泣いて頼んだら、変わっていたのだろうか。

でも夕璃は言えなかった。
 



どんなに寂しくても夕璃は、母を恨んだり憎んだことはなかった。

母は毎朝、夕璃よりも先に起きて、朝食を作ってくれたから。

食事をする夕璃と向かい合って夕璃の話しを聞いてくれたから。
 


“ただいま”を言う相手はいなくても、夕璃の“行ってきます”に母は笑顔で手を振ってくれたから。

お店が休みの日は夕璃を連れて買い物に行き、欲しがるものを何でも買ってくれたから。