「ママ、これからパパのお仕事手伝うの。ユーリ、一人でお留守番できる?」

母にそう聞かれたのは、夕璃が4年生の時だった。
 
「ユーリ、一人で大丈夫だよ。ママ、お仕事頑張ってね。」

夕璃は笑顔で答えていた。


今までだって、母は留守が多かったから。

いつも夕璃は一人でいたから。

お仕事なら仕方ない。

今までよりも少し、一人の時間が長くなるだけだから。
 



夕璃は母が大好きだった。

若くて美人で、いつも優しくて。

だから本当は、いつでも母と一緒に居たかったけれど。

夕璃はずっと、母の言うことをきいてきたから。

反抗や反発するという選択肢が、夕璃にはなかった。