何故あの頃、夕璃を愛するだけで満たされなかったのだろう。

夕璃は穏やかな優しい女の子だった。

いつも聞き分けがよく愚図ることもなかった。

光子のたった一人の分身だったのに。
 


「ママ、ちょっと大切な用事があるの。ユーリ、一人でお留守番できる?」

小学生になった夕璃に聞く。
 
「できるよ。ユーリ一年生だもの。ママ、行ってもいいよ。」

夕璃は健気に笑顔を見せて光子に答えた。
 
「ごめんね。大急ぎで用事すませて、お土産買って帰るからね。」



夕璃の寂しさはわかっていたはずなのに。

何故、あの時出かけてしまったのだろう。

夕璃を置いて行くほどの用事じゃなかったのに。