満たされない光子が夜、夕璃を置いて外出していると知らせたのは朗だった。

まだ小学生の夕璃を一人にして、光子はどこに行っているのか。

問い詰めると素直に謝る光子。

PTAの集まりとか、友達に会っていたとか。

本当か嘘かわからない言い訳をして。
 

光子を放っている徹は、強く責めることができない。

光子を責めることで自分が責められるから。


「大丈夫よ。徹さんを裏切ることはしていないから。」

そんな風に言う光子。
 
「ユーリはどうするんだ。一人で可哀そうじゃないか。」

小学生になった夕璃は登校時間が早くて、徹は起きられない。


朝のひと時さえも一緒に過ごせない徹に、夕璃のことで光子を責める資格はなかった。
 

「ユーリ、しっかりしているから。一人で自由に待っているわ。案外楽しそうよ。」


そんな光子の言葉にすがってしまう。

楽しいはずがないのに。
 

自分の弱さが光子に寂しい思いをさせ、夕璃から光子を奪ってしまった。

負い目を感じた徹は、仕事にのめり込んでいく。


順調に伸びていく仕事を言い訳にして。

皮肉なものでのめり込むほどに仕事はうまくいく。

仕事を全ての免罪符にして、徹は光子と夕璃の寂しさから目を逸らした。