夕璃が徹の職業を理解したのは、小学校の高学年になってからだった。

それまでは

“パパはたくさんお店をやっている”

としか知らなかった。

それが何のお店で、どこにあるのかも。

自分の家が裕福なことだけで十分だったから。
 



山手の高級住宅街。

古いけれど、大きな洋館。

家族3人で住むには広すぎる家。

小学校から通っている私立の付属校は、同じような生活レベルの友達が多い。

でも夕璃が仲よくなる友達は、夕璃と同じように少し寂しい子ばかりだった。