「パパ、ゆうべはありがとう。」

車が走りだすと夕璃は言う。

前を向いたまま。恥ずかしそうに。


徹は夕璃の頭をポンポンと叩き
 
「昔はよく一緒に寝たのにな。」

と言う。


夕璃を寝かし付けてから、店に行くこともあった。

少しでも夕璃と一緒に居たくて。
 


「また一緒に寝てあげてもいいよ。何か買ってくれたら。」

横目で徹を見る夕璃に
 
「こっちのセリフだよ。」

と笑いながら、徹は心で謝っていた。



『ごめん、ユーリ。これからは、もっと一緒にいるから。昔みたいに甘えさせてあげるから。』
 

20分足らずで着いた学校。

嬉しそうに手を振って、門の中に消えていく夕璃。



いつから夕璃を犠牲にしていたのだろう。


『それなのに夕璃は、まだこんなに俺を待っている。』


今なら取り戻せるだろうか。

夕璃との失ってしまった時間を。