水を飲みに行ったまま暫く戻らない徹を待って、光子はいつの間にか微睡んでいた。

寝室の扉が閉まる音にはっとして目を開ける。
 

「遅かったね。どうしたの。」

寝入りばなの気怠い声で光子が聞くと、
 

「ユーリに会った。」

徹は何かを考える顔で光子を見た。
 

「そう。何か話したの?」

だんだん目が冴えてきて、ベッドに起き上がる光子。
 


「部屋まで抱いて行ってって言われて。ユーリが眠るまで傍にいてって言われた。」


ぽつぽつと言う徹に、
 

「ユーリが?そんなこと言ったの?どうして?」

光子は驚いた声で言う。
 
「寂しいんだろう。」

徹はフッと寂しそうに笑う。
 
「それでユーリは?寝たの?」
 
「ああ。小さい時みたいに寝かし付けてきたよ。子供の時と同じ顔してさ。可愛いんだよ、まだ。」

徹は自虐的な笑顔を見せた。
 


「ごめん、光子。俺、忘れていたかも。お前とユーリ以外、何もいらないって思っていたのに。」
 
「どうしたのよ、急に。」

光子が言うと
 


「明日、ゆっくり話そう。朝、起こして。ユーリと一緒に。」

と言って、徹は布団を被った。