光子は何を望んでいたのだろう。

今の夕璃と変わらない年で、家族を支えていた。


愛情なのか責任だったのか。


ただ生きるために。

命を守るために。



今、光子は命以上の何を求めているのだろう。
 


光子の父は、光子が小学6年生の時に病死した。

父が元気な頃は普通の家庭だった。

特別裕福ではないけれど貧しくもなかった。

父の病気は光子から命以外の全てを奪った。
 


父の病が発覚した時、光子は5年生。

妹の恵子は3年生だった。

病状は深刻で、まだ若かった父の体を猛スピードで蝕んでいく。

苦しむ父。何とか救おうとする母。

光子は全てを見ていた。
 


半年後、父が亡くなった時に家族の少ない蓄えは、底をついていた。


母は光子達の為に必死で働く。

光子と恵子は何もかも我慢して諦めることを覚える。



ただ生きるために。
 


そのころの光子は、何の為に我慢をしていたのだろう。

いつか、命以上のものを手にできると信じていたのか。

生きてさえいれば。