徹と光子が結婚する時に譲られたという、大きな洋館。

元々は曾祖父の持ち物だったらしい。

夕璃の両親が、住みやすいように室内を改築した古い建物。

夕璃が一人で留守番するには、あまりにも広い家。
 


重厚なリビングは生活感がなく、高級な調度品はいつも綺麗に整えられていた。

光子が出かけると、夕璃は大きな音量でテレビを付ける。

一人でいることを忘れる為に。
 


そしてダイニングに用意させたおやつを持ち込み、寝転んだまま食べる。

光子がいたら決してできない。

一人で留守番する特権。
 


小さな頃は、リビングいっぱいにおもちゃを広げて、寂しさを紛らしていた。

帰った光子は夕璃に留守番をさせている負い目から、散らかった部屋を見ても何も言わない。

小さくため息をついて、
 

「片付けようね、ユーリ。」と言う。


光子が帰った嬉しさで、夕璃は素直に頷く。

その頃はまだ、何故光子が出かけるのか知らなかったから。

ただ光子が帰ってきたことが嬉しかったから。

そのころは。ただ一人が寂しかったから。