「ただいま。」

と控えめに声をかけて、夕璃はドアを開く。

広い玄関ホール。

リビングの扉を開けて聞こえた声に、靴をしまう夕璃は顔を上げる。
 


「こんな遅くまで遊んでいて、悪い子だ。」
 
「朗叔父ちゃん。どうして?」

夕璃はいたずらを見つかった子供の顔で聞く。
 


「ママが心配していたよ。毎日ユーリの帰りが遅いって。」

朗の言葉に、夕璃は皮肉な笑みを浮かべる。
 
「補習、補習。勉強、大変なのよ、これでも。」

朗の顔を見た時の嬉しさは消えていた。

光子のことを言われた途端に。
 


「こんなに遅くまで。毎日。先生も大変だね。」

徹の、年の離れた弟。

小さな頃から夕璃は大好きだった。
 


「そう。今時の先生は大変なの。」

朗の横をすり抜ける夕璃。