|《碧空 Side》


朝、あいつは酷い顔をしていた。

多分泣いたんだろう。

若干足首を引きずってるから

“誰か”が関わってるんだろうな。


「春野さんなんかあったのかな」


休み時間、俺のところに悠斗がきた。


「知らね、泣いたんじゃないの」

「そうだよな、“興味ない”からな」


そこの部分強調しなくても…

興味がないわけではないその逆だ。

ただ、俺の将来に巻き込みたくないだけ。



俺の家は特別金持ちではないが

親父が有名な会社の社長で、俺に後継ぎをさせるらしい。(母さんから聞いた)

親父曰く社長になるなら結婚しろ と



俺の母さんもそうだったらしい。

いわゆる “政略結婚” みたい感じだと思う

婚約者も決められている。


同じクラスの木村 鳴海(Narumi Kimura)

彼女も、もちろん俺もそこに恋愛感情はない


木村のところの会社が倒産しかけていたのを

親父の会社に頼みこみ条件付きで

今の状況に至るわけだ。



「お前このままでいいのかよ」

「なにがだよ」


悠斗は俺の家の事情も婚約者がいることも

……俺が蘭を好きなことも知ってる


「また春野さんの知らないところで言いに言ってくるんだろ」


小学の時から変わらないこと。

蘭に何かあった時は俺がそいつらのところに行って牽制してた。

今回もそれはこれからも変わらないが


「あいつには笑っててほしいからな」


本音だが本音じゃない。

笑っててほしいのは事実。だけど、俺がいないところで笑ってるのはみたくない。


俺の近くで笑っててほしい。

俺に笑いかけてほしい。

俺だけの蘭になってほしい。


まあ叶うことはないけどな。