私、廉人さんに迷惑をかけているんだ

でも
廉人さんは笑顔だったから
私は信じて待つよ

逃げたら
きっと廉人さんが
また怒る

そんなの嫌だよ

私は廉人さんが好きだ

だから
一緒にいたい

『どういうことだ!
木下は雇うなと言ったはずだ』

ダミ声の怒鳴りが聞こえてきた

『いいですよ
契約を打ち切りしましょう』

廉人さんの爽やかな声が聞こえた

『何を言っている?』

『ファックスには
雇った場合は契約を破棄する、と書いてありました

俺は面接をして、採用すると決めましたから

ファックスにあった通り
契約を破棄してくださって構いません』

『麗華はどうなる!
小さいころから
お前の妻になると言ってきた

婚約者だろう』

『それは貴方がたが
勝手に言っていることであり

俺には何の関係もない話です

麗華さんのお話をなさるなら
どうぞ
お引き取りください』

『何?
わしを甘く見ているな』

『そういうつもりじゃ
ありません

はっきり申し上げます
麗華さんと結婚する気は毛頭ありません

俺は誰かの名声や地位を借りて
成長しようとは思っていません

自分の力で
立ちあがり
大きくしていきたいのです

なので
麗華さんの件は丁重に
御断りします』