それは時間にして十分ほどだった。その間にも会議は白熱し、ああでもない、こうでもないと議論が交わされている。

「待たせたな」

 進展しない議論に差した光。一筋の希望にノネットは詰め寄った。

「カガミさん! なんか、随分疲れきってますけど大丈夫ですか?」

「カガミのことは気にするな。今はメレの幸せだけを考えろ!」

「カ、カガミさん!」

 ノネットは目頭が熱くなった。

「かっけー! 兄貴!」

 そんな野次が飛ぶ。

「朗報だ。一人、いいのを見つけた」
 
 無論、その発言が今回の騒動の発端である。
 全てを知ったメレは大きく叫んだ。

「情報漏洩にもほどがある!」

 渾身の叫びである。
 味方のはずが、一番の腹心が、最初から敵と共謀していたという事実。これが狼狽えずにいられるだろうか。
 命令されてもいないのに、語り終えたノネットは両足を折り曲げ座っていた。

「それで、ですね。同じくお嫁さんを探していたオルフェ様と意気投合しまして……カガミさんにも協力してもらって、ちょっと魔法のランプを発送して、出会いのきっかけを作ったといいますか……。見事オルフェ様のお眼鏡に適ったメレ様は、晴れて妻に迎えられるといいますか……」

 ノネットは怯えながら語る。本来ここはオフレコのはずだったと。
 メレ様を幸せにし隊? 何だその集い初耳だ。
 ぼうっと聞き入っている間にエセルとレーラは連行されていた。

「最初から全部やらせ、カガミも共犯? わたくし一人で滑稽にも踊らされていたなんて……」

「違います! そんなつもりは……」

「貴女たち、わたくしに黙って何をしているの!」

「だってメレ様が一人ぼっちだから!」

「はい!? 何を言って、貴女がいるじゃない」

「嘘だ!」

「う、うそ? 嘘をついてどうするのよ」

「僕は嬉しかった。見える人と会えて。でも、僕が話しかけたから……。僕は一人じゃなくなったけど、メレ様が一人ぼっちになった!」

 今にも泣き出しそうなノネットは心からメレのためを思って行動したのだろう。その点については怒る気力が失せてしまう。