彼女のためならばと揺らぐ良心も持ち合わせているけれど。オルフェと共に品を選ぶ行為については盛大な引っかかりを覚えてしまう。

「お断りと伝えて」

 笑顔で答え、扉を閉め鍵もかけた。カティナには悪いが、微妙なプレゼントをもらったとしても微笑ましく受け取ってもらおう。
 ところが数分後、またもベルが鳴っては嫌な予感しかしない。

「……という経緯で、はっきりきっぱりお断りしたはずよ。わたくしのランプは有能なはずなのにおかしいわね」

 嫌な予感、どころか通り越して本人が立っていた。ホラーか!

「他に頼める奴もいないんだ」

「パーティーでの有様を晒しておきながら何を言うの。おもてになるのだから、わたくしでなくても相手はいらっしゃるでしょう?」

 喜んで付き合うはずだ。ありありと目に浮かび、自然と声がきつくなる。

「打算のついて回る関係なんて面倒だ。その点お前は一緒に居て楽だろ」

「なっ!」

 お前がいい、なんて。

「この女たらし」

 さらりと口説き文句のようなことを言われては頬が熱くなってしまう。だがメレは女の敵だと冷たく突っぱね威嚇した。オルフェは意味が分からないという顔をしている。

「……ああもう!」

 メレとて家族がいないわけではない。妹への想いは心を動かすのに十分すぎる理由だった。

「いいこと。これはカティナ様のためよ!」

「助かるよ」

 ラーシェルに任せれば簡単なのに、わからないなりにも自ら選びたいという。その優しさに敬意を表して、可愛いカティナのためにも引き受けようと思った。

「それで、何を買うつもり?」

「飾り気のない妹に指輪でも選んでやりたくてね」

「貴方、性格は悪いけれど良い兄なのね」

 兄に想われ、家族から愛される少女が羨ましい。
 妬みほど醜悪な感情ではないけれど、自分が失ったものの大きさを見せつけられる瞬間は気持ちのいいものではない。

「お褒めにあずかり光栄です。お前、兄弟は?」

「一応、弟がいるわ」