「そこで魔法のランプよ! あれは自ら自然中の元素を取り込んで生成、つまりランプの中に力を貯められるの。だからこそ、ただの人間でも扱えるというものよ。顔とか形状は、それはまあ……趣味を詰めたのは、否定はしないけれど」

 この話題や止めよう。口ごもって抜け道を模索すると別の精霊の顔が浮かんだ。

「まずは第一段階としてカガミを作ったの。鏡は世界中にあるでしょう? 色んな場所で貯めた力を一か所に呼び寄せたらって、構想までに随分と時間もかかったけれど、その前進のおかげで魔法のランプのアイディアも生まれて――」

 オルフェと目が合い、メレは唐突に講義を止めた。

「どうした?」

「わ、悪かったわ」

「何が?」

「だから……つまらなかったでしょう? 長く話し過ぎたわ」

 口論ばかりしているオルフェが聴き入ってくれた。その事実を認識した途端、恥ずかしくなった。いたたまれずに視線を逸らす。

(きっと呆れているわ。わたくしにとっては普通のことでも、人間が訊いて楽しい話ではないもの)

 オルフェに呆れられた。そう思いこんでいたメレだが、予想に反しての耳を打つのは優しい声音だった。

「好きなんだな、魔法」

 人間にしてみれば意味のわからないことを延々と語っていたのにもかかわらず、受け入れてくれたことに嬉しさが滲む。

「……わたくしの誇りですもの」

「余計にわからない。お前は凄い魔女なんだろ? 何故そんな物が必要だ」

 その通りだとメレが謙遜なく答えれば更に納得いかないと漏らす。

「ランプなんて作らなければ俺と面倒な勝負をすることもなかった。そうまでして何を求める?」

 夜風が木々を揺らし沈黙が続いた。
 問いを下げるつもりはないようで、ひたすらメレの答えを待っている。

「褒め言葉に免じて話してやるけれど、わたくしにだって叶えたい願いはあるの。それは自分では叶えられないことよ。でも、もう……誰もわたくしの願いを叶えてくれる人はいないから」

「いない?」

「魔女は滅びへ向かっている。わたくしほどの使い手は、もういないでしょうね。だから――」

「願いを叶えてくれる人とやら自分で作ったと」

 訂正することはない。続けようとしていた言葉そのままだった。

「そうまでして叶えたい願いはなんだ?」

 魔法講義に輝かせていた瞳から無邪気さが消える。